中国の偽札事情 ~ATMから偽札が?!
2019年4月10日 記
当社と外貨紙幣の鑑定機製造メーカーとは、外貨紙幣の偽札について、定期的に情報交換をしています。
どの鑑定機製造メーカーの研究部門でも、偽札の判別方法などを日々研究開発しています。
しかし、偽札鑑定に関する情報は、外部に対しては公開されることはなく、社内であってもトップシークレットです。
それでも、偽札鑑定の核心部分に触れない内容であれば、ある程度の情報は当社のような両替商に対して提供してくれます。
この記事では、紙幣鑑定機の製造メーカーの担当者から聞いた中国人民元の偽札事情も交えながら、中国人民元の情報をお伝えいたします。
目次
1. 中国人民元の基本情報
通貨コード RMB/CNY
主要通貨の象徴である国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)の構成通貨ですが、中国は投資目的などでの国境を越えた人民元のやり取りを現在でも規制しており、完全に自由に使える通貨とは言えない面もあります。
紙幣のデザインは、表面にすべて毛沢東の肖像画が描かれており、裏面にはモンゴル文字、チベット文字、アラビア文字、アルファベットが表記されています。
1元=およそ16.6円(2019年4月現在)
持ち出し制限
外貨については、5千米ドル相当を超える外貨(円やドル等)を持ち込む場合は、税関で申告が必要です。
持ち出しは、5千米ドル相当を超え1万米ドルまでの場合は、預金銀行での許可証の取得が必要です。
1万米ドル相当を超える場合は、外貨管理局の許可を受けた上で、預金銀行での許可証の取得が必要です。
人民元については持ち込み、持ち出しともに2万元までに制限されています。
帰国の際に残った人民元を外貨(円やドル等)へ換金する場合は、中国の主要都市から出国する場合のみ可能です(主に空港内の銀行で可能)。
外貨から人民元への換金した際の換金証明書「兑换水单」が必要になりますので、きちんと保管しておきましょう。
(在中国日本国大使館 HPより)
2. 中国で旅行者が遭遇する偽札被害とは?
中国のATMから中国元の偽札が出てくる?
日本ではまず考えられないことですが、中国のATMからは偽札が出てくるという話があります。
ところで、この話は本当でしょうか?
「そんなことは絶対に無い!」
とは言い切れませんが、ゼロではありません。
もし偽札と気づいたら、その場を動かず監視カメラに向かって「偽札申告」をしなければ、真札と交換して貰えませんので覚えておきましょう。
さて、少し別の視点からこの中国のATMの偽札について考えてみましょう。
もし、ATMから出てきた中国元紙幣が偽札であるならば、ATMの偽札の鑑定精度が相当悪いということになります。
偽札の鑑定精度が悪いATMを使っていること自体、日本の銀行にとってはありえないことだと思います。
それでは、偽札の鑑定精度が悪いATMは中国では許容されるレベルなのでしょうか?
たとえ中国の銀行であっても、普通は考えにくいことです。
であるなら、ATMの精度はそれほど悪くないと考えるのが妥当です。
「ATMから出てくる偽札の中国元は、偽札鑑定精度を上回る偽札であるので、一般人は偽札と気づかないレベルでは?」
と考える方が妥当とも言えるでしょう。
実は、中国のATMから中国元の偽札が出てくるという話には裏があります。
上記の通り、たとえ中国元の偽札がATMから出てきたとしても、その場で偽札申告をすれば真札と交換してもらえます。
交換してもらえるのであるならば、それほど問題になる話ではないのです。
しかし、ATMから偽札が出るという話が広がっています。
ATMから偽札が出て被害にあったという人の話をよく聞いてみると、
「ATMから出てきたお札をお店やタクシーで支払に使った際に、店員や運転手からこのお札は偽札だといわれ、そのお札はATMから引き出したお札だから、ATMから偽札がでたんだ。」
という事です。
この話を聞いて、読者でお気づきになった方もいられるでしょう。
このATMから偽札が出るという話は、実は、店員やタクシー運転手が偽札にすり替えているというのが実態です。
偽札は、銀行のATMから出てくるのではなく、支払をした際に、店員や運転手にすり替えられているということです。
昔、ある中国に駐在している商社マンに聞いた話ですが、
「中国では偽札が偽札として売られている」
のです。
なぜ偽札が偽札として売られているの?
誰が、何の目的で買うの?
と当時は思ったのですが、このATMの中国元偽札話とリンクすれば、
「なるほど!」
と納得したのでした。
このATMから偽札が出てくる話(店員や運転手に偽札にすり替えられる話)は、韓国の偽札鑑定機のメーカーの方にも話をして、韓国でも同じ様な被害にあった人がいるのか?と聞いたところ、同じ様な被害があると言っていました。
韓国人の間でも、中国に旅行した際に人民元の偽札問題があり、殆どが偽札にすり替えられているのが実態のようです。
では、なぜ?すり替えられたとわかったのでしょうか?
お隣の韓国ではこの人民元の偽札問題が起こり、人民元を両替した韓国の銀行や両替商にクレームが多数寄せられました。
両替した韓国の銀行に偽札だと言われたお札を持ち込み、
「どうしてくれるんだ!」
と沢山のお客様が店頭で騒いだのです。
これに困った銀行は、この銀行が渡したとされる人民元の偽札に対応するために、お札の番号を読み取れる機械を導入し、①いつ、②誰に、③どの番号の人民元を渡したかを把握できるシステムを構築しました。
そのシステムを導入した後、相変わらず血相を変えて来店されるクレーム客に対して人民元の偽札に対応したところ、渡した人民元とは違う番号の人民元がクレームの対象となっていることが解ったのでした。
そこで、クレームのお客様に事情を詳しく聞いたところ、偽札だと言われたのは、
①タクシーの支払時
②レストランで支払いをした時
③ホテルでの支払時
④外貨両替店での両替時
ということがわかったのでした。
あるお客様の話では、
タクシーの運転手から、
「この100元は偽物だから別の100元ないの?」
と言われ、それに応じること10回というのも有ったようです。
この韓国の人民元偽札話からも分かる通り、
「人民元の偽札問題は、現地支払い時のすり替え問題」
と言えるのです。
このような被害に合わないためには、
①支払時には目を離さず注意をする。
②支払う際に使う人民元のお札番号を控えておく。
ことです。
②のお札の番号を控える方法はいろいろとありますが、一番簡単な方法としては、スマートフォンで紙幣を写真撮影しておき控えておくのが良いでしょう。
3. 厄介な北朝鮮関与(?)の偽人民元
真偽はともかくとして、北朝鮮は、偽札の製造国として有名です。
米ドルの偽100ドル札の製造には同国が関与していると言われ、その偽札の精度は年々上がっており、一般人ではまず偽札かどうかは判別ができないものまで登場しています。
2015年から偽造防止技術が大幅に強化された中国の100人民元(約1700円)の新札から偽造紙幣が初めて発見されたと、中国中央テレビが2016年3月28日に報じました。
中国メディアは、この偽造紙幣が北朝鮮と中国の国境地域で広範囲に流通している点をあげ、北朝鮮で作られた可能性を提起しています。
また、中国官営「環球時報」の電子版の環球網は、中朝国境地域などで流通する人民元の偽造紙幣は北朝鮮で製造された可能性があるとし、北朝鮮の偽造紙幣が中国経済を脅かしていると報じました。
”米100ドルの超精密偽造紙幣「スーパーノート」の製造で悪名高い北朝鮮が、人民元も偽造している。北朝鮮による偽造紙幣は、色や感触、透かし、点字などが本物とは見分けがつかないほど精巧で、俗称「偽札プラス」と呼ばれている”とし、注意を呼びかけました。
4. 偽人民元に対するメーカー対応
本物と見分けがつかないような偽札は大変厄介です。
この様な偽札があることについて、どう思うのか?
なにか対策をしているのか?
と偽札鑑定機製造メーカーの担当者に質問しました。
すると、担当者は、次のように語りました。
「北朝鮮製の偽札に対応することはできます。
しかし、最新の偽札は、当社としても未知なものですから、当社の鑑定機を通過するものもあるでしょう。
だから、確実に偽札を見分けることができるとは言えません。
当社の偽札鑑定機をすり抜ける偽札は、本物と言っても良いくらい精巧でしょうから、普通に流通してしまうでしょう。
メーカーとしては、わかっている偽札に対応するのは勿論ですが、偽札が流通しにくい仕組みを提供するのが仕事だと思いっています。
そのための機能は、紙幣の番号を読み取る機能が有効だと思います。
偽札の番号がわかったら、偽札情報のデーターベースに偽札の紙幣番号を登録します。
偽札鑑定機で読み取った紙幣の番号は、オンラインで照合するシステムを作ることができます。
また、偽札鑑定機をインターネット経由でシステムにつなぎ、偽札鑑定機でお札を読み取った瞬間に偽札のデータベースに照会をかけて偽札かどうかを判断できるようにしていきたいと考えています。」
これからは、偽札の流通を難しくさせるシステムがますます重要になってくるでしょう。
5. 中国お笑い偽札事情
先程の韓国での人民元偽札騒動に追加情報です。
4つの場所をお伝えしていますが、ちょっと変わったお笑い偽札情報です。
これは中国のホテルで起こった話です。
ある宿泊客が、ホテルで支払いをしようとした時に偽札だと判明。
ホテルの従業員がすり替えた?
それとも??
この宿泊客は、人民元の紙幣番号を控えていました。
チェックアウトの支払時に、偽札だと指摘されて、偽札にすり替わったことに気づいたのでした。
確かに昨晩、部屋でお財布を確認したときには本物だった。
ということは、、、ホテルの部屋ですり替わった!?
ということになり、部屋に戻って調べることに。
部屋を調べてみると、なんとベットの下に人が隠れている!
一体、この人だれ!!??
この隠れていた泥棒が持っていたのが、宿泊客が持っていた人民元の真札。
控えていた番号とも一致。
清掃員と結託して部屋のベットの下に隠れておき、宿泊客が寝静まった後に財布の中の人民元を偽札にすり替えて、宿泊客がチェックアウトした後に清掃が入る前に部屋から退散する。
寝静まった後に財布の中のお金を盗んで逃げるのではなく、偽札にすり替えて、宿泊客がチェックアウトした後に部屋から退散する。
チェックアウト時にお金を支払うかどうかわからないし、支払ったとしても従業員が偽札に気づかない場合もある。
気づいたとしても、お札を持っていた宿泊客は、どこですり替わったかわからないから泣き寝入り。
まさか、宿泊している部屋の中ですり替えられたとは夢にも思わない。
こんな事を考えて偽札にすり替えていたんでしょうね。。。
本当にいろいろ考える人がいるものです。
自分は大丈夫と思わずに、気をつけましょう!
【参考情報】
在中国日本国大使館
~日本からお越しの皆様へ~ 安全の手引き
https://www.cn.emb-japan.go.jp/consular_j/joho120220_j.htm
中国人民元(100元札)の偽札に関する注意喚起
https://www.hk.emb-japan.go.jp/jp/docs/cndollars.pdf
6. M changerの中国元偽札対応
M changerでは、人民元にかかわらず、全ての外貨紙幣において、偽札鑑定機による偽札チェックを行い、偽札鑑定機でお札の番号を画像データで読み取って、日時情報も合わせて保存しています。
お客様には普段目につかないところですが、偽札への対応をしております。
ご来店された方はご存知だと思いますが、M changerが入っている郵船ビルのオフィスビルには、複数台のセキュリティカメラが設置されており、24時間監視を行っています。
また、店内にもセキュリティカメラが設置されており、24時間監視を行っています。
セキュリティ対策を施し、偽札が持ち込まれにくい環境を作り、たとえ持ち込まれたとしてもトレースできる環境を構築してますので、ご安心してM changerの外貨両替をご利用ください。
紙幣番号の画像とテキストデータを日時と一緒に自動保存(保存件数は5億枚)
紙幣番号をサーマルプリンターでプリントアウト